投稿雑誌 You times us is... InsideOut

強き乙女のリボンとレース / 安藤 麗

強き乙女のリボンとレース

novel

安藤 麗PROFILE




新学期前夜の不安抑へむと一直線に前髪を切る



携帯に薔薇の紋章付ける君茨の心易く触れじと



十字架に幾何学的な美を読める無神論者の首にチョーカー



紅の血潮流るる君が胸結ぶリボンは猛き漆黒



ヴアイオリンケースの中にイデア有りビスクドールは不変の美学



靴紐を一つ一つと結ひ上げて世間に挑む朝の玄関



黒革のバツグに今日の決意詰めいざ立ち向かへリボンの君よ



寒風に揺れるフリルを抑へては負けじと結ぶ君の唇



黒薔薇に髑髏あしらふコサージユは魔除けと成りて級友祓ふ



殺気立つ暗黒色のアイシヤドウ君の矜持の犯されし時



無理解な級友達の言葉には黒きケープが鎧と成れる



陽光に喜ぶ皆を背に歩む黒き日傘のレースなびかせ



弱き日は人目に付かず泣きはらすレースは優し君を包みて



病院の待合室もまた愉し刺繍・マフラー・文庫本有り



チエンバロを叩けば頬に涙有り両手が日々の辛苦を伝ふ



春の恋初々しくも見栄張りて厚底ブーツ肉刺を作れり



巻き髪に込めし想ひは熱かれど我だけが知る君の恋情



いつまでもアリスの夢を見る君は我を兎にお茶会の午後



ぎこちなく君が珈琲飲めるのは名曲喫茶バツハは歌ふ



不器用な笑みを見せるが恥づかしく扇子掲げる君はいぢらし



君は今シルエツトにて口付けす影絵に成らぬ君の赤頬



ネツクレス初めて君に掛ける時鳥肌立てる純朴アリス



梅雨の日も傘のレースを躍らせて黒きブーツの音は軽やか



夏日でも長袖の君涼しげに世間を嗤ふ斜に構へて



真白きに青筋透ける君が胸我への赤き熱情や有る



蒼白の素肌の君は大理石彫像と成り永遠にや生きむ



黒皮の日記帳には鍵掛けて乙女の秘密押し花にせり



日が昇り小鳥の声の聞こゆれば君がベツドの子守唄なり



編み上げのブーツは今日も地を叩く乙女の怒り音楽にして



カチユーシヤの黒きリボンは媚売らず曲がらぬ意志の勲章と成る

印刷して読むことができます。

PROFILE安藤 麗

歌人・詩人。大学生の時に短歌を詠み始め、かつては読売新聞「カラン卿の短歌魔宮」にも参加。最近の活動としては『InsideOut』での活動の他、短歌研究社『短歌研究』や抒情文芸刊行会『抒情文芸』で作品を発表している。初の同人誌歌集『ポエーシス・アモーリス 球体関節人形 麗』はみじんこ洞HP(http://mijincodou.cart.fc2.com/)にて通信販売中。

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